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WACRA

投稿日:2014年1月20日 /  記事カテゴリー:ケース

2013年 7月上旬ベルリンでWACRA(World Association for Case method Research and Application)の研究会が開催され参加してきた。海外におけるケース・メソッド研究会は、この研究会とNACRA(North American Case Research Association )に大別される。前者は、ケース・メソッド研究のみならずケース・スタデイ(質的研究)とティーチング研究(こちらは1月に開催)に関するプログラム(ACT= Academy for Creative Teaching)に分かれている。後者(NACRA)は、ケース・ライテイング中心の研究会で報告されたケースのなかで優れたケースと認められたものは、ケース・リサーチ・ジャーナル(Case Research Journal)に掲載される。

また、ケース・ティーチングやケース・ライテイングのセミナーは、毎年Harvard Business School、University of Western Ontario(カナダ), ECCH(European Case Clearing House,現 Case Center,2014年の1月スイスのIMD, 6月バルセロナのIESE)などで開催されている。
このほか、ITP(International Teachers’ Program for Educators in Management,欧州中心プラスUS)やIMTA(International Management Teachers’ Academy, 旧東欧圏中心)によるインストラクター向けプログラムのなかでも取り扱われている。
筆者は、数年間中央大学ビジネススクール・ドクターコース(後楽園校舎)で「ケース・メソッド」授業を担当してきた。その経験をもとに、昨年(2012年)、経営学会全国大会(於日本大学商学部)にて「ケース・ライテイング・プロセス」、今年(2013年)、同関東部会(於専修大学商学部神田校舎)にて「ケースメソッド・ティーチングー体系化に向けてー」というテーマで報告し、ケース・メソッド教育の普及を図っている。その功績が認められ、今回(2013年7月)WACRAコンファレンス(於ベルリン)より、「Case Method Ambassador」賞を授与された。出席したプログラムは、ケース・ティーチングやケース・ライテイングのベテラン(ジム・エリスキーネ*1、マーガレット・ナウメ*2)らがこの1・2年に引退してしまったので、特に報告すべきるものはない。

「ケース・ティーチング」や「ケース・ライテイング(Writing with cases、Teaching with cases)」の著者であるエリスキーネ教授(ウエスタン・オンタリオ大学、インディアナ大学出身)は現代の「ミスター・ケースメソッド」と言われ、現在も多くの人たちの指導にあたっている。また、ミスター&ミセス・ナウメ教授(ニュー・ハンプシャー大学。両者ともスタンフォード大学出身)は「ケース・ライテイング(The Art & Craft of Case Writing)」の著者として知られ、 マーガレットは札幌農林学校教授ウイリアム・クラーク博士(2013年10月30日NHKのテレビ番組「ヒストリア」で紹介)を曾祖父に持つ。
参加したもう一つの理由は、ホテル(マリテイム)前に「ドイツ抵抗博物館(ヒトラー暗殺計画の実行者の一人であるクラウス・フォン・シュタウフェンベルグ大佐らが処刑された中庭がある)」があったこと。また、今年(2013年)10月18日がナポレオン戦争戦勝200周年にあたる年であることから、ライプチヒにおける勝利を記念したデンクマール(記念碑,1913年作)を訪問したかったからである(実際、10月20日当時の軍服を着た約6000人の人達により、当時の戦闘模様「フランス軍vs.プロイセン・オーストリア・ロシア・スエーデン軍」が再現され、その様子はテレビ番組「世界不思議発見(11月16日」にオン・エアーされた)。

ナポレオン・ボナパルト率いるフランス軍により欧州大陸を席捲された各国のなかで、プロイセン陸軍はナポレオンのような天才的指導者(将軍)を育てることは難しいと判断し、指揮官を補佐するスタッフの教育(作戦・戦史など)に力を注いだ(その後、参謀本部設立)。このなかで、ケース教材(地図上に書かれた彼我の状況をもとに作戦計画の立案など)を使った教育がケース・メソッド教育の起源だろう、と思う。実際、筆者は学生時代に神田の古本屋(文華堂)で、陸軍大学のケース教材(演習問題)を入手したことがある。そこには、宇都宮方面より人数不明の部隊(以下、赤軍と称す)が急速に南下しつつある、という情報が入った。これに対し、我が軍(以下、青軍と称す)は、千葉・下総台地、東京北部、埼玉南部に散開する諸部隊(歩兵連隊・大隊、通信隊、砲兵隊、輜重隊、工兵隊、使用可能な車両・偵察機など)が地図上(記号で)に記されている。
あなた(作戦参謀見習いで)は、ケースに書かれている状況を把握し、現有戦力をもとに作戦計画を立案せよ(一定の時間内)、という問題(設問)であった。(了)

会員 H

WACRA” への1件のコメント

  1. ケースメソッドが体系化された歴史的な背景や構図のわかるブログでした。プロイセン陸軍のスタッフ教育がケースメソッドの起源に位置することは、私の中で大変に斬新な知識となりました。今関わることの背景を世界的な視点から知り、その領域への興味が更に深まり、またこの話に関する新たな興味も沸いてきました。

    全く余談がですが、クラウス・フォン・シュタウフェンベルグ大佐のヒットラー暗殺については、「ワルキューレ」というタイトルで映画化されており、印象的な映画の一つです。その最期の場をご覧になって来たのですね。

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