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不安心理をあおるフェイクニュースや悪質商法にご注意!

投稿日:2020年6月28日 /  記事カテゴリー:コラム

1月下旬頃に武漢の混乱を知らせるニュースを見て、新型コロナウイルス感染症が日本、そして世界を揺るがすような大きな問題になるとは、誰も思っていなかったことでしょう。
こんな社会情勢に乗じて起きるのが次のような悪質商法です。

マスクを無料送付するというメッセージがスマートフォンに届いた
新型コロナウイルス流行拡大の影響で金の相場が上がるので金を買う権利を申し込むように言われた
新型コロナウイルスの感染を防ぐために、行政から委託を受けて消毒に回っているという電話がかかってきた

うっかりスマートフォンのメッセージを信じて画面に表示された番号に電話したり、業者の言いなりになったりすると、悪質商法に引っかかってしまうことになります。
また、このような悪質商法に限らず、今回は次のような事態も起きています。

マスク需要の高まりに乗じて、ネットオークションサイトなどで高値転売が起きた
マスクと同じ原料から出来ているのでトイレットペーパーの在庫もなくなるというデマが流れ、トイレットペーパーを買いだめする消費者が激増した
週末の外出を自粛するようにという知事の記者会見が報道されると、スーパーに食料品購入のため長蛇の列ができ、売り切れが続出した

非常事態に陥ると、人々は冷静に考えられなくなってしまいます。そのような時に不安心理を掻き立てるようなフェイクニュースや詐欺的メッセージに触れると、内容をよく吟味しないまま、嘘の情報であっても簡単に信じてしまうことになりがちです。

これを社会心理学的に分析すると次のようになります。

「精緻化見込みモデル」という学説によれば、「中心ルート」といって内容を良く吟味する思考パターンと「周辺ルート」といって簡便な判断方法を採用する思考パターンの2つがあります。「中心ルート」の思考パターンが採用されるのは、対象について知識や経験がある場合、「周辺ルート」が採用されるのはそうでない場合です。人間は本質的に楽をしようとする傾向があるため、簡便な「周辺ルート」が採用されることが多く、これを「ヒューリスティック処理」と呼んでいます。今回の場合、どちらのルートが採用されやすいのでしょうか。
まず、在宅勤務や休校、外出自粛のように普段と異なる行動を強いられている上に、マスクが実際に店頭からなくなっているという「状況的要因」があります。また、ウィルスの対処方法は専門家でない限り分からないことですから、ほとんどの人は「内的要因」として知識や経験がない状態にあります。そして、情報の中に「すぐ買わないとなくなる」といった「時間的な切迫感」や「希少性」の要素が含まれていると、ますます冷静な思考が出来ない状況に陥ります。そうすると、対象(フェイクニュースや悪質商法などの情報)について十分に吟味しない「周辺ルート」を採用して詐欺的な情報を「誤信」し、衝動的に行動してしまうことになります(下図参照)。

釘宮ブログ
では、どのようにすれば、情報を十分に吟味できるようになるのでしょうか。
この場合、「状況的要因」を操作することは出来ませんから、「内的要因」の観点からアプローチするしかありません。まずは、正しい知識を身に着けるために、公的機関など信頼できる情報源から、ウイルスの対処方法や商品の在庫状況などに関する情報を取得することが必要でしょう。トイレットペーパーの在庫がなくなることはないとメーカーが情報発信したり、経済産業省が「マスクや消毒液やトイレットペーパーの状況」をホームページに掲載したりしているのは、信頼できる情報源からの情報発信の例です。悪質商法についても具体的な手口を知識として持つことが有効だと言われています。
また、このような時だからこそ、「この情報は信じられるのか」「本当にいま買わなければならないのか」と考えてみることが必要です。アンガーマネジメント(怒りをおさえる方法)にテンカウント法(怒りをすぐに発散することなく、10数えることで落着きを取り戻す方法)がありますが、それと同じように、一瞬立ち止まって心を落ち着かせ、すぐ行動に移さないようにすることが大切です。
思考より行動が先走りがちな性格の持ち主の場合、それも難しいことかもしれません。そのような時のために、良く分からないことは一人で判断せず、誰かに相談する習慣を持っておくのが良いのではないでしょうか。自分という「内的要因」でなく、第三者という「状況的要因」の力を借りるということです。その場合、敢えて自分と異なる思考回路を持つ人に訊いてみることが必要でしょう。趣味嗜好の似ている人だと、同じような判断をする可能性が高いからです。「何か買おうとすると、いつも家の者に反対されて困る」とお嘆きの諸氏。時にはブレーキとなり、時にはアクセルとなる大切な存在だと思ってください。
今回の新型コロナウイルス騒ぎに限らず、台風や地震といった災害時にも、デマが飛び交いやすいものです。皆様、くれぐれも不安心理をあおるフェィクニュースや商法にはご注意ください。

釘宮悦子

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