不祥事から学ぶ
TV・新聞のニュースで製品事故や偽装問題がたびたび報道されています。このような問題が起きると、一気に消費者の信頼を失い、企業経営を危うくする事態を招くことがあります。万が一に備え、緊急時対応マニュアルの策定が必要であることは広く理解されているかと思います。
リスク・コンサルティング会社に依頼すれば、社告・謝罪会見も含めて必要な対策を整えてくれますし、すでに緊急時対応マニュアルは策定済という企業も多いでしょう。しかし、果たして、それだけでよいのでしょうか。重要な施策を人任せにしてしまうと、手軽ではありますが、社内に危機意識は醸成されません。マニュアルとして存在していても、それが社員の意識の中に浸透していなければ、すでに策定済の緊急時対応マニュアルが、いざという時に機能しないということも考えられます。
そこで、1年に最低1回は関係者が集まり、ケース・スタディーをやってみることをお勧めします。過去1年間の社告記事の中からいくつかのケースをピックアップし、その報道記事を見ながら、社内の各部署(広報、品質保証、お客様相談室、製造、開発等)のメンバーがグループ・ディスカッションを行うという方法です。
たとえば、ある企業に関する記事の中に、「この製品による重篤・重症者は発生していないが、軽傷・軽症者も含めると被害は200人以上にのぼる。指摘があるまで、企業はその事実を公表していなかった」という記述があったとします。各グループのディスカッションでは、「被害を集約するシステムが整っていたのか」「被害を集約するシステムはあっても、重症・重篤でないとフラグが立たないシステムではなかったのか」「被害が多数発生している事実はつかんでいても、それを公表しないという選択肢を選んでしまったのではないか」など、さまざまな指摘が行われます。複数のグループが意見を共有することで、徐々に自分たちがやらなければならないことが見えてきます。そして、終了後、本来業務に戻った時には、ケース・スタディーから得られた各自の気づきに基づき、自部署の仕事の中に緊急時対応に必要な事柄を落とし込むことが出来るはずです。他部署メンバーと顔を合わせて話し合うことも、その後の情報交換や緊急体制づくりに役立つでしょう。
多くの企業で、CSR、コンプライアンス部門が設置されています。担当部門が主導して規程作成や業務監査、知識を伝えるコンプライアンス研修を実施することも大切ですが、定期的に関係者を集めた上記のような方法も有効です。このようなケース・スタディーを実施することで、単なる知識にとどまらず、社員の意識や行動から変革を起こすことが出来るはずです。どうぞお試しください。(了)
会員K
社員個々人への意識強化・改革を進めるにあたり、ケーススタディは必須と思いました。特にリスクマネジメントにおいては、社員個々の意識のあり方が重要なので、集合研修を通じて「考えさせる」ことは効果的と思いました。リスクマネジメントにしても、ISOにしても、その他にしても、「マニュアルや審査基準の書類があれば、それで良し、作れば満足」となっており、その意識自体を変えるべきなのかもしれません。そういう意味では、あれば良し、作れば満足と考えている上位層の意識改革も大切なのかもしれないと感じました。