人材育成
人材育成は、適切な人材活用によって可能になります。組織の維持発展に不可欠な活動です。管理職の部下に対する指導・育成、個性を重視した能力開発、集団の活性化は如何にあるべきかを考えます。
ある日、営業部調整係の島田係長は、新人の小川さんから相談を持ち込まれる。事務処理のルールが守られないため、営業部内の庶務を担当する彼女の仕事にしわ寄せが来ているというものだった。昨年まで2人だった庶務担当も今年から彼女一人となり、折からの合理化で人員補充も不可能である。入社時は明るく元気だった小川さんは笑顔がなくなり、このままでは前任者同様に退職する可能性もある。島田は先輩女性社員に事情を聞いて回るが…。
三つ葉電機㈱は、自動車向けの電気部品メーカーで、顧客・株主・従業員の3者を三つ葉にたとえ、社名とするほど社員重視の中堅企業だった。それでも景気悪化後は当面採用者数を減らし、その分だけ社員研修の充実で対処することになった。新入社員研修も見直した。高橋業務課長は、今年、平岩と高村の大卒新人2名をもらった。二人は夏のボーナスをもらった直後、8月中旬に休暇を取りたいと申し出た。しかし、その頃は新人研修の追指導の時期だったので、高橋課長は問い質した。すると二人は、追指導は任意参加のはずであり、二人で多少時期をずらすから問題はないはずだと言う。翌朝課長は滝田業務部長と村上人事課長から、厳しい批判を受けた。大卒社員は社員の模範になってもらわねば困る、というのだった。
5年振りに新卒が配属され、新入社員である高橋のメンター(良き先輩社員)に選ばれた本田は、張り切っていた。
いよいよ新卒の高橋が部品課に配属され、「自由な雰囲気と個性の尊重という方針に惹かれて入社した。仕事とプライベートは分けたい」というようなことを自己紹介で述べた。本田は一瞬首をかしげたが、できるだけ意思を尊重しようと考えていた。
1ヶ月ほどしたある日、本田は山田主任から高橋の勤務状態について注意を受け、メンターの役割について考えるようにと言われた。本田は仕事中心に指導し、勤務態度については本人の判断に任せてきたが、自分の指導が我流になっていないかと考え、もう一度役割について振り返ろうと決心した。
第2基本設計部A電力担当グループの木原主任は、入社以来、直属上司平井課長に指導を受け、現在では6人の部下を抱えていた。部下の1人で将来を期待される春日君に頼んだ見積もりが遅れていることを注意するが、その後は自分の任務に負われ、キリキリ舞いの日々が続いた。それを手助けしようと申し出た春日君には、自分の仕事に集中するようにきつく言うのだった。ある日、平井課長に呼び出され、春日君が退職の意思表示をしたことを聞かされ、部下のことに関心を持つのは主任の仕事だとたしなめられるのだった。