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田中総務部長が勤務する造船所は、地方の企業城下町の領主的存在である。ある日ニュースが入ってきた。近隣に大規模流通基地の建設話が持ち上がっているという。田中はデジャヴを感じた。昔、彼が新入社員だったころ、ある工場が近くに進出する話があって、市に圧力を掛けて阻止したことがあった。その後の大不況で、人員整理をした造船所も、市も大打撃を受けた。あの工場を誘致できていればと、市も会社も後悔したものである。当時と今とでは企業を取り巻く社会、経済状況は大いに異なっている。何よりも会社に当時ほどの力は無い。この話は会社にと って吉なのか凶なのか判断し難い。とりあえず関連部署と話し合おうと考えた。