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県庁渉外課長の山田は県景観条例の施行を前にして、その条例に違反するとして建設中の無線塔の工事中止を依頼するため、施工主である携帯電話会社を訪れた。県内の企業は今までは、県庁の申し出なら尊重し、善処を約束してくれていた。ところがその会社は外資の支配下にあり、株主の代表である役員に対する説明責任を主張してきた。少なくとも県庁の言い分を正確に伝える義務があると言う。現在合法である建造物について、『立法手続き中の景観条例に配慮して工事を中止せよ』との県庁の要請は理不尽である、とする主張は常識的であり、首肯せざるを得ない。しかし政治的な思惑もあり、山田も簡単に引き下がるわけにはいかない。話し合いのために英語の通訳を用意しなければならなくなった。庁内に適当な通訳を見付けるのは困難である。知事の期待に応えられそうもなく、新たな難問まで背負い込んで山田は困惑している。